2024.3.2-3  Event report

2024.3.2-3 Event report

こんにちは。ブランド古着のKLDです。

2024年3月2日、3日の2日間、糸島市のKLDイベントスペースにてイベントを開催しました。


イベントの様子

 

昼12時、表の大きなシャッターを開けて広く見せた店内は、正面にCFCLの透け感のあるドレスを着たトルソーが設置され、足元はその日の朝に買ってきたというミモザの花で囲まれていました。

 



向かって右側には大きめのラックと、ワイヤーで吊った浮遊感のあるディスプレイ。左側にはワイヤーと繊細な糸(なんとミシン用の糸だそう)を張り巡らせた空間に服がかけられており、自由に見れるようになっています。

向かって右側のディスプレイの一部

向かって左側のディスプレイの一部

 

奥には試着室が設けられ、思い思いに服を試着していく方も多くいました。

2日間、途切れずにお客様が来てくださり、賑やかな雰囲気の中でイベントを終えることが出来ました。

ありがとうございました。


インタビュー

今回、イベントを企画してくださった、shogo_icikawaさんと浅井つなみさんのお二人にインタビューをしました。

ぜひご覧ください。

 

shogo_icikawa氏

浅井つなみ氏



ー今回はどういった経緯でイベントの開催に至ったんですか?


shogo_icikawa:今回はまず伊東さん(KLD代表)から連絡があって、「こういう物件があるんだけど」という感じでまだイベントスペースを契約前の段階でお話をもらって。
店内の写真を見せてもらって、「めっちゃ良いじゃないですか」という形で何かやろうという話になりました。

ー今回はお二人に販売する服のセレクトをお任せしての開催となりましたが、セレクトのテーマのようなものはありましたか?

shogo_icikawa:「部分抽象化」ですね。絵を描く時に感じる感覚を、今回のセレクトをする際にトレースしようと思ったんですけど。
一般的に「抽象的」というともっと全体がぼやけているイメージなので「抽象化」と呼んでいて、いつも絵を描く時には例えば「右手の肘から先を抽象化させる」という感覚で制作をおこなっています。
今回は、そういった感覚を「目」に落として見て、そういった感覚をあの空間に落とし込もうという意図でやりました。


引用:shogo_icikawa インスタグラムより


ー絵を制作する時はいつも「部分抽象化」というスタンスで制作をおこなっているんですか?それはどういった感覚なのでしょうか?

shogo_icikawa:そうですね。部分抽象化は、例えば「2」のものを「1.5」にするとか、「2」のものを「2.5」にするとか。そういう感覚です。

ー(浅井)つなみさんのセレクトに関しては今回のスタンスとしてはどのような感じでしたか?

浅井つなみ:今回は空間を見て決めていったところが強くて、まずブランド等にこだわらず「実際に見てみたい」と思った服をリストからセレクトしていって、空間に置いていきながら詳細を決めていきました。
「マネキンがたくさんある空間」みたいなイメージが浮かんできて、実際に作っていった所もあって…

shogo_icikawa:それも「抽象化」だよね。実際に物理的なトルソーは数体しか無かったけど、空間にドローイングするように張り巡らせた糸(向かって左側のディスプレイ)の部分がマネキンとかトルソーの役割をしたっていう所があって。それも角度を変えて見れば一種の「抽象化」っていうコンセプトに通じてると思う。

糸を張り巡らせたディスプレイ


ー今のお話にも出ていた、店内に入って左側にあった糸を張り巡らせたディスプレイはどういった所から出てきたアイデアだったんですか?


shogo_icikawa:元々は、服をかけるラックの役割を持たせようとしてワイヤーを張り巡らせていたんです。そこから派生して、「空に引くドローイング」のような線があってもいいなというイメージが出てきて、糸を使ったディスプレイに変わっていったという経緯があります。

浅井つなみ:ちょうどミシンの糸があったので、ワイヤーにプラスして使ってみたことによって、強度があってディスプレイに使えるという事が分かったのは良かったです。
なんだろう…「行きたいところに行ってほしい」というような感じで、糸が色々なところに行って交差している空間が作れたかなと思います。

icikawaさんの画家としての活動についてお伺いしたいです。普段はどういった形で活動をされていますか?

shogo_icikawa:制作の基盤になっているのは、ライブパフォーマンスです。最近の制作方法は1つしかなくて、ライブで制作したものを、自宅等でトリミングするという作業で作っています。
昔は「手直し」と思っていたんですけど、今は「トリミング」という感覚です。今回のテーマでもあった「抽象化」にも繋がるんですが、ライブで描いたものをやりっぱなすのは「抽象」だと思っていて、そこから残ってほしい部分だけをトリミングしていくのが「抽象化」に持っていくという考え方ですね。
そこから生まれてきたのが、「円」なんですよ。


引用:shogo_icikawa インスタグラムより



ー確かに、Instagramの作品などを拝見していても円を描いた作品が多く感じました。ああいった作品もライブで描いたあとにトリミングするという形で制作されているんですか?

shogo_icikawa:そうですね。あれもライブで円をばっと引いちゃって、そこから制作しています。
僕は「多円相」って呼んでるんですけど、禅画の流れで「一円相」っていう一筆ですっと描く墨絵があるんですけど。あれをもう少し関わりを増やして、何回か円を引いた結果、「今回はこれで行きます」っていう美観の提示と思って制作しています。

ーインスタの投稿に、印象的なタイトルのようなものがついている事がありますが、どういった形で浮かんできてつけているんですか?

shogo_icikawa:それこそ「来た」ものを濁さない、怖がらないというスタンスでそのまま出しています。

ー言葉が書かれているものと書かれていないものがあるんですが、どういった差があるんでしょうか。

shogo_icikawa:基本的にノンクレジット、ノーコンセプトというのは僕が大切にしている事なんですが、元々言葉遊びが好きというのもあって書いているところがあります。
でも絵に向かって言葉を出してるというわけではなくて、その時の気分の言葉で絵とは全然違ったりもするんですよ。



ー直近でいうと「冷たい偶数は奇数に近し」という言葉がありました。これは例えばどういったところから出てきた言葉なんですか?

shogo_icikawa:それは共感覚の一部なんですけど、「割り切れる人」と「割り切れない人」というのがいると感じていて、例えば僕は奇数みたいな人間なんで(割り切れずに)こういう生き方をしてるっていうのを自負してるんですけど、やっぱり「割り切れる人」と関わっていくことでパーツが揃うっていうのがどうしてもあると思うんですよ。
その中でも、伊東さん(KLD代表)と今回のプロジェクトを進めていくなかで出てきた言葉で、実は「冷たい偶数」っていうのは伊東さんのことなんですけど。
「偶数」になってるから、ちゃんと外部に伝えられるパッケージになれるという考えなんですけど、その中でもちょっと…カオス指数が高いところがあるというか。そういう部分は、割り切れないゾーンと親和が生まれる部分があるなぁという感じです。

ー制作の際にどういうものからインスピレーションを得るんでしょうか。

shogo_icikawa:最近は「身体」ですね。自分の身体なんですけど、毎日20キロくらい散歩に行くんですよ。

ー20キロ…!?

shogo_icikawa:はい。さっきライブで制作するって言ったじゃないですか、ライブって武道と一緒で、極限になったらもう、経験出来てる動きしか出てこないわけですよ。
例えば「今からここに線を引く」っていって線を引くのは「デザイン」なのでデザイナーの仕事なんです。もっと「自分でもこうなると思わなかった」というのを提示するという事をしたいと思っているので、ひたすら身体を動かして、新しい動きを会得する事で「新しい線がもらえる」という考え方で制作しています。

ー色々な動きを身体にインストールしておいて描くという感じなんですね。「何を描くか」みたいなものは「降りてくる」みたいな感じがあるんですか?

shogo_icikawa:「何を描く」みたいなことが来た時はもう…一切関わらないですね。一番恐れている事ともいえるので。

ーそうなんですか。あくまで身体性から生まれる結果としての創作と言った感じなんでしょうか。

shogo_icikawa:その前に発生した人間関係とか、情緒を揺さぶられたものとかが刷り込まれるのは当たり前の事として実感しているので、そこに意識を届かせるっていうのを辞めようという、「外す」時間が一番大変ですね。それでもやっぱり100%は外れてないので。

ーありがとうございます。つなみさんの制作についても聞かせてください。今回とても可愛いニットの帽子とかオブジェがあったんですけど、普段はニットで制作をしているんですか?

浅井つなみ:制作は色々しているんですが、例えば毛糸なんかだとモヘヤの質感が好きで、作品として編んでいくとネオンっぽく発光しているように見えたりする感じが面白くて、オブジェなどを作っています。

つなみさんのニット作品


ー制作したものはこれまで販売したりしていたんですか?


浅井つなみ:これまではフェイスマスクのようなものを依頼されて制作して提供させていただいたりとか、主に知り合いや繋がりのある人からの依頼があって制作していました。

依頼されて制作したマスク


ーこれから作ってみたいものなどはありますか?

浅井つなみ:お洋服も好きなんですけど、今は顔を覆うマスクへの興味が強くあります。
以前フェイスマスクを制作した時に、その時はグラフィティ(アート)をされる人が活動に使うということで作ったんですけど、その時にちょうど「能」の話が出たんですね。
能って全く表情が見えないんだけど、それで表現をするということに惹かれて、自分でもそれをやってみたいと思ったし、自分の制作でも「顔を被る」みたいなことが出来たら面白いなと感じています。

素材は毛糸とか布とか、何でも使ってやってみたいなと思っています。

ー今回はニットの展示が目立っていましたが、編み物等は元々されていたんですか?

浅井つなみ:編み物は小さい頃におばあちゃんに教えてもらったのが始まりで、高校も服飾の学校だったというのもあってやっていました。
ミシンとかの基礎的なこともそこで身につけた感じです。

ー洋服の制作もされていたんですか?

浅井つなみ:洋服は、以前務めていたところで古着のリメイク等をおこなっていたのが主なんですけど…

shogo_icikawa:彼女の制作はリメイクの域を超えていると思います。ウェディングドレスを解体したりとか、振袖を作ったりしていて。
制作自体はかなりクラシックスタイルだと思いますね。過去の制作を見ていてもかなり一点を見つめるような、一角形的な生き方の人だなと感じます。

ーありがとうございます。今後のつなみさんの制作も楽しみです。またあの会場でやってみたい事などはありますか?

shogo_icikawa:そうですね、今回はどんな人が来てくれるか等全てが未知数だったというのもあって、一定「見なくて(想定しなくて)良いや」というフェーズを入れたんですね。ピュアなコンセプトだったというか。
それで、今回ある程度どんなお客さんが来てくれるかというのが体感できたので、次にやってみたら良いんじゃないかなと思ったのは「妄想のコンセプト」はどうかなと思ってます。

ー妄想。

shogo_icikawa:はい。例えば「1940年代の兵士がエアマックスを履いていたら何がどう変わるか?」という感じの妄想です。それをずっと僕はこれまで販売員時代のバイイングの時に自分にかけてた「いじわる」というか、パッケージなんですけど。
そういう縛りを用いると「自分ごと」が消えるんですよ。バイイングはそれが大事だなと思っていて。
そこのパーセンテージみたいなものをいじる必要があるな、というのが今回の反省点であって、次やるコンセプトとして入れようっていう感じですね。

ーありがとうございました。本当に今回良いイベントになったと思います。次回もよろしくお願いします。

shogo_icikawa:ありがとうございました。

浅井つなみ:ありがとうございました。




今後もKLD USED CLOTHINGでは、糸島市のイベントスペースにて様々なイベントを企画する予定です。

新しい情報は常にこちらで発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。

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